離婚したいのですが、夫の年金の半分貰えるって本当ですか?
個別相談で50代女性からこんなご質問をいただきました。
専業主婦やパートだけでなく、正社員でも妻の方が収入の少ないケースがほとんどですので、女性にとっては気になるところですね。
実は、離婚した場合、ご主人の年金のまるまる半分を貰えるわけではありません。
結婚していた期間の厚生年金部分だけが対象で、制度改正の前後でも違いがあります。
年金を分けるには複雑な要素が多く、少し分かりにくい制度になってしまっているのが実情です。
また、近年、熟年離婚が増えているのは、年金分割によって相手の年金のうち一定程度をもらえることになったことが理由の一つに挙げられています。
今回は、離婚する時に年金を分ける「年金分割」をまとめてみました。
1.年金分割とは?
結婚している間は,給料に応じて厚生年金が天引きされていますので,給料の多い側に年金保険料を納めた記録が偏って貯まっています。
離婚する時には,資産だけでなく、将来(多くの場合65歳以降)受け取る年金や今現在受け取っている公的年金を公平になるように、
夫婦でその記録を分け合う制度を「年金分割」と言います。
年金分割は,自動的に分割される仕組みにはなっていません。
手続きを行って初めて年金が分割されます。
夫婦の内,年金分割を受けると得をする側(普通は給料の少ない側、多くは妻)は、自分の持っている年金分割の権利を活用して老後に備えるため、
年金分割の知識を身につけ,確実に手続きをする必要があります。
もし、妻の方が高収入の場合は、妻の記録の一部を夫に移すことになります。
そして、結婚していた期間が対象になりますので、独身時代の年金記録は含まれません。
なお、分割の対象は厚生年金の部分だけであり、国民年金部分は対象となりません。
そのため、夫が自営業で厚生年金に全く加入していないような場合は、年金分割は難しいでしょう。
2、年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
*「合意分割」とは?
ご夫婦で話し合うか、家庭裁判所の決定を経て、分割するかどうかを決める仕組みです。
ただし、上限は「夫50%、妻50%」までで、それ以上の分割は認められません。
つまり、夫の収入が多い場合、「夫60%、妻40%」は大丈夫ですが、「夫40%、妻60%」など妻の方が多くなる分割は認められていません。
また、共働き夫婦で、ともに3号期間が無い場合は、すべて合意分割となり、
この場合も分割が認められるのは、夫婦の支払った保険料が同額になるまでです。
*「3号分割」とは?
2008年4月以降に「会社員と専業主婦(夫)」だった3号期間について、夫の年金記録の半分を妻に強制的に移す分割方法です。
これは、夫の意志に関わらず、年金事務所に請求すれば、自動的に行われます。
「3号分割」という名がついているのは、第3号被保険者であるサラリーマンの専業主婦の妻などが利用できる制度だからです。
もっとも請求を受ける側が障害年金の受給者である場合には利用できません。
離婚を考えていらっしゃる方は、これまでの夫婦の年金記録や分割の対象となる期間について、年金事務所に情報請求をすることができます。
ご夫婦のどちらかが内緒で請求しても相手に知られることはないそうですのでご安心下さい。
どちらの分割も請求期限は原則、離婚後2年です。
年金記録は人それぞれですので、詳しくは最寄りの年金事務所にお問い合わせ下さい。
日本年金機構のホームページはこちら↓