『精神腫瘍医』の存在をご存知でしょうか?
精神腫瘍医とは、がん専門の精神科・心療内科医のことです。
『人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話』(KADOKAWA)という本の出版記念講演会があり、10月29日(日)、台風の雨の中、鎌倉市二階堂のカジュ・アート・スペースに行って来ました。
この本は、「がん体験は、人生の積み残した課題と向き合うきっかけとなり、新しい扉を開くことにつながります。決して不幸とは言い切れないのです。」とおっしゃる、国立がん研究センター中央病院の精神腫瘍科科長・清水研医師とその患者さんたちの対話・物語をまとめたものです。
今は、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代です。本当に身近な病気で、私自身もこの秋、身内や友人が亡くなりました。だれもがいずれ死を迎えることは分かっていても、それはずっと先のことと直視することを避けています。しかし、ある日、突然人生の期限は突きつけられるのです。それは本人だけでなく、家族にとっても大きな心の混乱を招きます。 そんな時、精神腫瘍科医が混乱している自分の横で話をじっと聴き、寄り添い、気持ちを一緒に整理してくれたなら、そして応援してくれたなら、どんなに心強いでしょう。
講演会では、清水研先生と著者の稲垣麻由美さん、そして、第7話に登場の千賀泰幸さんも登壇され、「僕が清水先生との出逢いによって救われた経験は、きっと多くの同じようながん体験者の役に立つものだから、精神腫瘍科を知ってもらうための本が作りたい!」そんな思いからこの本は生まれたとお話されました。
会場の参加者からは、「私の父もがんの手術をしたところです。家族としては、何かしてあげたいけれど、何をしてよいのかわからない。千賀さんは、ご家族にどんなことをしてもらうと嬉しかったですか?」という質問が出て、その問いに「お父さんにちゃんと訊いてあげてください。何をしてほしい?って。そんな風に子どもが気にかけてくれるだけで嬉しいものです。」と千賀さんは答えられ、私も土砂降りの雨に目をそらしていないと泣いてしまいそうでしたが、どなたもご自分の体験と重ね、胸を詰まらせていらっしゃいました。 その後も参加者のご自身やご家族の質問が続き、清水先生は1つ1つ丁寧に、時にユーモラスに応えてくださり、会場全体があたたかいカウンセリングルームのようでした。
そんな「精神腫瘍科」の診察は保険診療で受けられるそうです。がんになった時、その機会を得られるか、得られないかは大きな違いです。一人ではどうすることもできない辛さが少しでも和らぐようお伝えしたいと思いました。
日頃、忙しさにかまけ後回しにしがちですが、「病気」という体験をきっかけに、どう大切な人に寄り添い、どう大切な時間を過ごすか、そして、自分自身、「自分の人生を全うするとはどういうことなのか・・・」わからないけれど、なんということのない日常の一つひとつ、楽しいことも切ないことも味わって生きていきたいと思います。
【清水研 しみず けん】
http://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/psycho-oncology/010/20170830153011.html
精神科医・医学博士 国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科科長
日本総合病院医学会専門医・指導医 日本精神神経学会専門医・指導医
【稲垣麻由美 いながきまゆみ】
文筆家 編集者。株式会社一凛堂 代表取締役http://ichirindou.com/
「命」と「想い」をテーマに執筆を続けている。7年近い取材期間を経て刊行した『戦地で生きる支えとなった 115通の恋文』(扶桑社)は、舞台「逢いたくて」の原案となり、日本橋三越劇場などで上演。
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